柴崎 信三
魯迅の日本 漱石のイギリス―「留学の世紀」を生きた人びと
文化の磁力(文明の磁場)と留学 |
漱石と魯迅を中心に、同時代の日本からの西欧留学生や、中国からの日本留学生たちの世界が描かれている。
ラフカディオ・ハーンや嘉納治五郎らの登場も興味深い。
描かれているのは百年余りも昔のことではあるが、留学生の生活と人生というものの本質的な部分は、そのまま現代にも通づる部分が多い。
本書の中に出てくる劉岸偉の言。
「留学生はつねに真摯な愛国者であるとともに、冷徹な文明批評家である」(P165)
「魯迅が死ぬまで日本を語らなかったのと対照的に、弟の周作人は素直に日本を認めました。留学で得たのは日本に形を変えて保存された古い中国文化の懐かしさであり、日本人の自己否定能力の高さが新しい知識を日本化して高める美意識につながった、という文化的な発見でした。その二!世紀の日本人の経験を、日本人自身がもっと積極的に世界に伝えるべきだと思います」(P166)。